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主人公は部屋から出る。家から出る。そして銭湯に行く。女湯に入る。
それはアニメの世界。
現実は違う。アニメほど甘くはない。
現実はまず、部屋から出れない。出る事が出来ない。
閉まっている扉を開ける事ができない。
厳密には動かせない。ピクリとも動かない。
窓も、扉も、人だって動かせない。
当たり前だ。時が止まっているのだから。
私が錦之宮楓を殺害出来ない理由も、これに付随する。
私がナイフを持ちながら、時を止めたとする。
するとどうだろうか。面白い事に、ナイフは動かなくなる。微動だにしなくなる。
ピクリともしなくなる。
私が手を放しても、空中で止まったままになる。面白い光景だ。写メをしたくなる。
でもその写メをするための携帯すら、動かない。机から剥がれない。持ち上げられない。ボタンが押せない。タッチしても反応しない。
私は、私の体とその僅かな周りの空間しか動かせない。
つまり本体と、服程度の空間しか動かす事が出来ない。
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