赤霧孝之助1

7/17

1996人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
主人公は部屋から出る。家から出る。そして銭湯に行く。女湯に入る。 それはアニメの世界。 現実は違う。アニメほど甘くはない。 現実はまず、部屋から出れない。出る事が出来ない。 閉まっている扉を開ける事ができない。 厳密には動かせない。ピクリとも動かない。 窓も、扉も、人だって動かせない。 当たり前だ。時が止まっているのだから。 私が錦之宮楓を殺害出来ない理由も、これに付随する。 私がナイフを持ちながら、時を止めたとする。 するとどうだろうか。面白い事に、ナイフは動かなくなる。微動だにしなくなる。 ピクリともしなくなる。 私が手を放しても、空中で止まったままになる。面白い光景だ。写メをしたくなる。 でもその写メをするための携帯すら、動かない。机から剥がれない。持ち上げられない。ボタンが押せない。タッチしても反応しない。 私は、私の体とその僅かな周りの空間しか動かせない。 つまり本体と、服程度の空間しか動かす事が出来ない。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1996人が本棚に入れています
本棚に追加