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「冗談ですよ。十々海先生」
「…………」
僕に笑いかける。
ナイフを片手に持っている僕に。
彼女は何の邪気もはらませず、笑う。怯えとか、軽蔑とか、そんな暗い感情は一切読み取れない。
彼女はいつものように。いつもと変わらない無邪気な笑顔を僕に向ける。
「でも十々海先生なら良いですよ?」
「からかうな」
暗殺者をからかうな。殺そうとしていたのに、犯すもクソもあるか。
彼女はニッと僕に向かって笑いかけ、あらぬ事を口にした。
耳を疑う事を言い出した。
「殺し屋さんだったんですね」
「…………」
僕は不意にナイフを隠した。
いや別に、今更隠してもどうしようもないが。
でもそういう目で見られる事が、ただ単に嫌だったと言うだけだ。
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