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私は再び時を動かす。次は十々海レッカと少しだけ距離を置いた。
彼はすぐさま私を見つけ、駆け出して来る。
その繰り出されるナイフを受け流し、私は彼の胸ぐらを掴んだ。
十々海レッカの服を強く握りしめた。
「何だ」
何だ。この違和感は。何だ、この手応えの無さは。
隙がある。時を止めながらそれは感じていた。感じてはいたが、手は出さなかった。罠かと思ったからだ。
しかしそうじゃない。本当にそれは隙だった。十々海レッカの死角。目と意識の届かない場所。
透矢崎ヒジリと遜色ない動き。兄弟だからか、コピーしたみたいな動き。
だが透矢崎ヒジリと違い、十々海レッカからは技のキレを感じない。避けるのなら私でも全く問題ない。
透矢崎ヒジリと同じ動きだが、詰めが甘い。甘すぎる。時を止めなくても、この程度なら避けられる。さばける。
私は十々海レッカの体を思いっきり投げ飛ばした。地面に叩きつけた。
「がっーー!」
「…………」
何だ、どうしたのだ。十々海レッカ。確かに暗殺者としては透矢崎ヒジリには劣る。戦闘力ならば、十々海レッカは透矢崎ヒジリには及ばない。
暗殺者としての十々海レッカは一流の中でも下の方だ。
だがそれは、私からすれば雲の上の話。地球から見て木星と土星、どっちが大きいかを見比べるような話。
どちらも果てしなく強く、確かに透矢崎ヒジリの方が強くはあるが、十々海レッカも十分過ぎるほど強い。
私なんぞ、手も足も出ない。時を止めてようやく足掻く事が出来るレベル。
腐っても一流。十々海レッカは本来ならば私が能力を行使しなければ触れる事すら出来ない相手だろう。
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