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「くそっーー!」
十々海レッカは再び起き上がる。しかし私はそれを許さない。
起き上がる前の彼に向かって、私は手を差し出した。チェックメイトを示唆するように。
首元に当てるようにして、手のひらを差し出した。私に刃物があれば、君は死んでいるよと伝えるように。
「迷っているのか?」
「…………」
十々海レッカがうつむく。歯を食いしばりながら、うつむく。その表情はやはり行き詰まっている。
まさか。彼ほどの暗殺者が、私に弄ばれるはずがない。私ごときにやられるはずがない。
何か原因がある。そう思って考えたが、答えはすぐに出てきた。
私の中ですんなりと、彼の心情が手に取るように伝わってきた。
「錦之宮楓を殺す事を、躊躇っているのか?」
「……はい」
返事は素直だった。私の問いに、彼はすんなりと答えた。
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