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「目の前にいるのは赤霧孝之助ではなく、錦之宮楓。
そう思って僕はナイフを振るいました」
「自分の殺意を確かめるために、かい?」
「はい」
自分が本当に錦之宮楓を殺せるのかどうか。彼女に向かって本物の殺意を抱けるかどうか。
本当にナイフを突きつけれるのかどうか。
それを、私を代わりの材料にして確かめたと言う事か。
大方の予想では、自分自身に暗示でもかけたのだろう。私を錦之宮楓だと思い込むように、鏡でも見ながら暗示をかけたのだろう。
それであの殺気。あからさまに出た殺気。
あれは私に対しての「断っても無理やり戦ってもらう」と言う意思表示ではなかったのだ。
「あからさまに出た殺気」ではなく「無理やりにでも絞り出した殺気」だったわけだ。
その作り物みたいな殺気を、私が取り違えただけだった。あからさまではなく、ただの偽の殺気。
目の前にいる錦之宮楓に対して、無理やり殺気を作り出したという訳か。
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