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「彼女のためを思うのであれば、殺せる方法を探してあげなさい。
それが出来るのは君だけだ。だから私は君を選んだ」
数多くいる暗殺者の中から、人道的な君を選んだ。
人並みに喜怒哀楽がある、君のような暗殺者を選んだ。
君なら必ず、諦めずに試行錯誤を繰り返し、力ではない暗殺方法を見つけ出すと確信しているから。
私がそう信じているから。
「希望の光が諦めてはいけない。
君が彼女の光になるんだ。分かるね、十々海レッカ」
「……はい」
確か彼の年齢は25。
まだまだ心も不安定だ。大人としては十分な歳だが、私から見ればまだまだ子供だ。生徒と何ら変わらない。
支えきれない分は、私が持とう。支えてあげよう。
折れそうになった心は、私が治してあげよう。包帯を巻いてあげよう。
依頼主として、校長として、一人の人間として。
だから十々海レッカ。彼女の事は君に任せる。君の事は私に任せればいい。だから彼女の事を、君は考えればいい。
「彼女のために、君は彼女を殺すんだ。
その他のサポートは、私が責任をもって行おう」
そこで会話は終わった。十々海レッカが喋らなくなった。口を開かなくなった。
彼が納得したかは分からない。理解したのかは分からない。分からないと言うか、恐らく納得なんてしていないだろう。
理解はしただろうが、納得なんてできるはずもないだろう。
迷いがなくなった訳ではないだろう。決心がついた訳でもないだろう。
大人の相談なんてそんな物だ。誰かに相談したからといって、それがすんなり解決するはずもない。
すんなり解決できたらそもそも悩んでいない。相談なんてしない。
正解なんてない。だから大人の相談はややこしい。
結局決めるのは自分。道を定めるのは自分。
ここからは彼の問題だ。彼が自分の道を選ばなくてはならない。
線路はしいた。道案内はした。
線路に沿うか、路線を変えるか、脱線するか。それは彼が決める。
私は私に出来る事しか、出来ないのだから。
十々海レッカは校長室を出て行った。
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