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「先生良かったねぇ。両親の許しが出たよ」
「何の許しだ」
「えっと。強姦?」
「こら」
強姦なんて女子高生が言うな。しかも君の両親はそんなのを許可していない。
「挨拶も済んだしねぇ。好感度抜群だよ」
「からかうな」
なんで結婚前提の彼氏みたいになってるんだ。そんな挨拶をした覚えはない。僕もないし、君のご両親も挨拶をされた覚えはないだろう。
挨拶違いだ。
錦之宮楓がいたずらに笑う。今日はいつにも増してご機嫌だ。笑顔が、いつもより明るい。いつも明るいけど、今日は一段と明るい。
心の底から笑ってる。
それだけ昨日の、両親との時間が楽しかったのだろう。
とても良い事だ。
これからも親子面接はじっくり二ヶ月かけて続く。日替わりで生徒の親が順々に学校を訪ねてくる。
もしかすると他の生徒も、暗く沈んでいる生徒たちも、彼女のように笑ってくれるのかもしれないな。
親と会話して、一緒に笑って、一緒に寝て、一緒に朝を迎えて。
それでテンションが少しでも上がってくれれば、彼女のように笑顔を見せてくれるかもしれない。
暗い教室の中が、少しでも明るくなってくれるかもしれない。
そんな事を考えていると、自然と気持ちが晴れてくる。考え事をしていて曇っていた心が、少しずつ晴れてくる。
暗い教室の中が明るく照らされる。その事を思い浮かべると少しだけ顔が緩んでくる。
気持ちと一緒に、顔の筋肉が緩んでくる。
「先生?何だか顔がスケベだよ?」
「うるさいなぁ」
少しだけ、教師に向いているかもしれないと思った瞬間だった。
暗殺者よりも、教師の方が僕にあっているのかもしれないと。
そう思った瞬間だった。
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