十々海レッカ10

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「先生良かったねぇ。両親の許しが出たよ」 「何の許しだ」 「えっと。強姦?」 「こら」 強姦なんて女子高生が言うな。しかも君の両親はそんなのを許可していない。 「挨拶も済んだしねぇ。好感度抜群だよ」 「からかうな」 なんで結婚前提の彼氏みたいになってるんだ。そんな挨拶をした覚えはない。僕もないし、君のご両親も挨拶をされた覚えはないだろう。 挨拶違いだ。 錦之宮楓がいたずらに笑う。今日はいつにも増してご機嫌だ。笑顔が、いつもより明るい。いつも明るいけど、今日は一段と明るい。 心の底から笑ってる。 それだけ昨日の、両親との時間が楽しかったのだろう。 とても良い事だ。 これからも親子面接はじっくり二ヶ月かけて続く。日替わりで生徒の親が順々に学校を訪ねてくる。 もしかすると他の生徒も、暗く沈んでいる生徒たちも、彼女のように笑ってくれるのかもしれないな。 親と会話して、一緒に笑って、一緒に寝て、一緒に朝を迎えて。 それでテンションが少しでも上がってくれれば、彼女のように笑顔を見せてくれるかもしれない。 暗い教室の中が、少しでも明るくなってくれるかもしれない。 そんな事を考えていると、自然と気持ちが晴れてくる。考え事をしていて曇っていた心が、少しずつ晴れてくる。 暗い教室の中が明るく照らされる。その事を思い浮かべると少しだけ顔が緩んでくる。 気持ちと一緒に、顔の筋肉が緩んでくる。 「先生?何だか顔がスケベだよ?」 「うるさいなぁ」 少しだけ、教師に向いているかもしれないと思った瞬間だった。 暗殺者よりも、教師の方が僕にあっているのかもしれないと。 そう思った瞬間だった。
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