十々海レッカ10

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いつもの僕なら気がつけた。暗殺者の僕なら、絶対に見逃さなかった。 感じる事ができた。センサーがもっと早く鳴るはずだった。 寝不足だった事。考え事をしていた事。錦之宮楓と会話をしていた事。油断していた事。 暗殺者ではなく教師の方が向いているかな、なんて、そんな腑抜けた事を考えていた事。 全てが重なり、僕の気の緩みを招いた。招いたから、僕は気がつく事ができなかった。 気付くのが遅れた。一瞬だけ、遅れた。 その一瞬は、まさに最悪とも言えるタイミングだった。 その一瞬で、僕の、そして彼女の全てが変わった。 錦之宮楓が客室の扉を開ける。その開けた瞬間、僕は錦之宮楓を止めようとした。 錦之宮楓を客室に入れてはいけない。そう頭の中でセンサーが鳴り響いた。 でもそれは、一瞬だけ遅かった。 僕が油断していたから遅かった。 全てのタイミングが重なり、それが最悪の自体を起こした。 僕がもっと早く気がついていれば、全く別のシナリオがあったかもしれないのに。 僕はそのタイミングを、完全に外してしまった。 伸ばした僕の手は届かず、錦之宮楓は客室に入り込む。 お父さんとお母さんのいる客室へと、何の躊躇いもなく入る。 扉を開けた瞬間に僕の嗅覚を刺激した血の臭い 鉄臭い、臭い。 それを感じてから、体が動き出すまでの時間が、一瞬だけ遅れた。 遅れてしまった。
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