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「えっ…………」
僕は瞬時に錦之宮楓に続き、部屋の中に入った。錦之宮楓を出そうとした。でもそれは全て手遅れだった。
錦之宮楓がそれらを見た後だった。
客室に入った錦之宮楓が立ちすくむ。棒立ちになる。固まる。
両親がいた。錦之宮楓の両親が、中にいた。あった。存在した。
錦之宮楓は唖然とする。空でも見上げるみたいに、ポカンと宙を見つめる。
両親を見て。両親だった、その体を見て。錦之宮楓は固まる。ただ目線が固定される。
部屋の壁に、向かい合わせになるように張り付けられている、自分の親を見て。
まるで罪人のように、壁に張り付けられている。
二人の遺体を見て。
錦之宮楓は言葉を失う。
床は血まみれだった。まだ新しい。つまり二人は先ほどまで生きていた。
当たり前だろう。錦之宮楓と共に夜を明かし、朝を迎えたのだから。
朝を迎えて、錦之宮楓が僕を呼びに来た。その間の時間の事だ。その僅かな時間の間に、この2人は殺された。
二人の体は無残にも切り刻まれ、ぐったりと下を向いていた。
両手に刺してある太いナイフのせいで、二人は両腕を広げながら息絶えていた。
床に横になる事も許されず、残酷なまでの死に方を強要されていた。
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