1996人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
「錦之宮ーー!」
手遅れだ。彼女が見てしまった。心の中でそう察してはいたが、それでも僕は彼女の目を塞いだ。
彼女を無理やり客室から出す。それと同時にポケットの中にあるタブレットを取り出して赤霧孝之助と水之上四季美に応援を求めた。
緊急事態。そんな単語を告げると、二人はすぐさま駆けつけてきた。特に赤霧孝之助は本当に一瞬で来た。
そこから先、二人の行動は非常に滑らかだった。僕なんかよりもずっと柔軟に事に当たっていた。
赤霧孝之助が全教員に連絡をして学校を閉鎖。寮に生徒を集めて、警備を厚くする。
水之上四季美はすぐさま錦之宮楓の元に駆け寄った。放心状態の彼女に向かって話しかけた。
どうやらカウンセリング的な事をしているようだった。しかしその言葉に、錦之宮楓が耳を傾けている様には見えなかった。
「どうだい?彼女の様子は」
「精神状態が不安定です。生徒を一時的にでも避難させた方がいいのでは?」
水之上四季美の提案に、赤霧孝之助が肩をすくめた。頭を横に振った。
最初のコメントを投稿しよう!