2000人が本棚に入れています
本棚に追加
「二人の遺体は速やかに処理される」
「処理……ですか」
「そうだ」
埋葬ではなく、処理。
僕の言いたい事が分かったらしく、赤霧孝之助は無表情で僕に向かって言った。
「公にはできない。これから水之上先生には出張に出てもらい、彼らの記憶のある人物を片っ端から当たってもらう。そこで全ての記憶を消してもらう。最初から存在しなかった事にしてもらう」
つまりそれが処理。埋葬と言う言葉ではなく、処理。
彼らの死を晒さずに、隠し通すための行動。
「話し合わなくてはならない議題はたくさんある。だがそれよりも先に、2人の遺体を葬る。まずはそこからだ」
話し合わなくてはならない議題。おそらくそれはこの惨状を作り出した人物についてだろう。
2人を殺した犯人についてだろう。
「錦之宮楓にはきちんと別れを告げさせる。その時間はもちろん用意する」
そう言って赤霧孝之助は錦之宮楓の父親の体を持ち上げた。母親の体を一度見て、僕に言う。
「手伝ってくれ。すぐに火葬する」
「……はい」
僕は彼女の母親の体を、そっと持ち上げた。
まだ暖かかった。
最初のコメントを投稿しよう!