十々海レッカ10

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赤霧孝之助と水之上四季美が、僕たちを残して席を外す。立ち去る。 僕は錦之宮楓を見た。呆然と、何を見ているかも分からない彼女の事を見つめた。 その姿に、僕は心を締め付けられた。 僕はしくじった。 何で。どうして気がつけなかった。僕なら分かったはずだ。 二人が殺される事が、分かったはずなんだ。 拳を強く握る。歯をくいしばる。 ヒジリ。僕の弟。 あいつが錦之宮楓の両親を殺した。間違いない。これはあいつの手口だ。 あいつが錦之宮楓の両親に手を出す。そんな事、少し考えれば分かったはずなのに。あの日の夜、ヒジリと会った夜、気付く事ができたはずなのに。 僕なら気がつけた。二人の警備をもっと強くしておくべきだった。 僕が、僕自身の事で一杯一杯でなければ、こんな事態には陥らなかった。 いつもの暗殺者からの目線で見る事が出来ていたら、2人は死なずに済んだ。 弟の愚行を止められた。 僕のせいだ。二人が死んだのは、僕のせいだ。 僕の考えが至らなかった。僕の油断が招いた結果だ。 「錦之宮……」 僕はゆっくりと、彼女を呼ぶ。 呆然と立ち尽くす彼女の肩に、そっと手を乗せた。 僕はこの後、彼女に何と言えばいい。 どうやって接すればいい。 慰めるのか……? 一緒に泣くのか……? 誰がやったんだと怒ればいいのか……? 僕がしっかりしていればと悔いればいいのか……? 彼女に、どんな顔を向ければいい。彼女に何て声をかければいい。彼女にどんな態度で接すればいい。 僕は。 僕のせいで死んだ両親の子供に、僕はどうやって接すればいい。 暗殺者の僕が。 教師まがいの僕が。 彼女になんて声をかければ良いんだ。 何が正解なんだ。
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