十々海レッカ10

13/18
前へ
/415ページ
次へ
「先生」 「っーー!」 僕は彼女から手を引っ込めた。 彼女の肩に乗せていた手を、サッと引っ込めた。 臆した。彼女を見るのが怖かった。 まだ準備が出来ていない。整ってない。心の準備も、言葉の準備も、態度の準備も、表情の準備も、全て何も出来てない。彼女との接し方を、僕はまだ決める事が出来ていない。 こういう場合、どうやって彼女に、どんな風に、何て言って、どうすれば正解なのか。 何も考えがまとまってない。 まとまってないのに。 頭の中がぐちゃぐちゃなのに。 まともに考える事が出来なくなっているのに。 彼女はそんな僕に対して。 「大丈夫だよ」 笑顔を向けた。 泣きそうなのに。ぐちゃぐちゃな顔なのに。 涙だって出てきているのに。 なのに。 なのに。 なのになのになのに。 彼女は僕に向かって笑いかけた。笑顔を作った。 私は大丈夫。 間違っても、力を暴走させるような事、絶対にしない。 大丈夫だよ。 彼女の笑顔が。 世界で一番悲しい笑顔が。 そう言っていた。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2001人が本棚に入れています
本棚に追加