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「先生」
「っーー!」
僕は彼女から手を引っ込めた。
彼女の肩に乗せていた手を、サッと引っ込めた。
臆した。彼女を見るのが怖かった。
まだ準備が出来ていない。整ってない。心の準備も、言葉の準備も、態度の準備も、表情の準備も、全て何も出来てない。彼女との接し方を、僕はまだ決める事が出来ていない。
こういう場合、どうやって彼女に、どんな風に、何て言って、どうすれば正解なのか。
何も考えがまとまってない。
まとまってないのに。
頭の中がぐちゃぐちゃなのに。
まともに考える事が出来なくなっているのに。
彼女はそんな僕に対して。
「大丈夫だよ」
笑顔を向けた。
泣きそうなのに。ぐちゃぐちゃな顔なのに。
涙だって出てきているのに。
なのに。
なのに。
なのになのになのに。
彼女は僕に向かって笑いかけた。笑顔を作った。
私は大丈夫。
間違っても、力を暴走させるような事、絶対にしない。
大丈夫だよ。
彼女の笑顔が。
世界で一番悲しい笑顔が。
そう言っていた。
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