十々海レッカ10

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「先生ぇ……。ぅあぁぁ……」 僕の体を、錦之宮楓が抱きしめ返す。彼女の腕に、手のひらに、力がこもってくる。 彼女が、僕の胸に顔をうずくめる。そこで震える。震えながら、弱々しく声を漏らす。涙を流す。 その声が、少しずつ大きくなってくる。線が切れたみたいに。我慢してた物が、爆発したみたいに。 「お父さん……。お母さんっ!嫌だ!いやだぁぁぁぁ!」 僕は強く、強く錦之宮楓を抱きしめた。放さないように強く。 剥がされないように強く。 地面の砂が宙を舞い出す。小さな地響きが発生する。地面が揺れる。風が起こる。建物が悲鳴を上げ出す。 「あ゛あぁぁぁぁ!うあ゛あぁぁぁぁぁぁぁ!」 壊れていく。校舎が。どんどん崩壊していく。 校舎だけではない。もっと広い範囲で念力が作用しているかもしれない。 校舎だけで収まっているか分からない。 分からないけど。 「たくさん泣け」 どうでもいい。 この子が泣きたい時に泣く事ができるなら。 あんな悲しい笑顔をせずに済むのなら。 もう世界がどうなろうと。 どうだっていい。 壊れようが、なくなろうが、滅びようが、どうでもいい。 僕の独断。完全な独りよがり。 ただの身勝手な行動。 それによってこの日。僕のその判断によって。 赤霧孝之助を校長とする、この学校の校舎が。 異能力者を匿う施設が。 崩壊した。
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