透矢崎ヒジリ1

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兄貴は俺の憧れだ。 でも目標ではない。憧れではあるが、目標にはしていない。 兄貴は凄い。俺なんかよりもずっと凄い。あの人は俺が出来ない事をたくさん出来る。数え切れないくらいのスキルを、兄貴は持っている。 暗殺者の家系に生まれて、俺は暗殺者としての生き方をずっとしてきた。闇の中で生きる術を学んできた。 人を殺す技だけを磨き、人を殺すスキルだけを高めた。 今では暗殺業界で成績トップ。 いや別に音楽みたいにオリコンチャートがあるのかって聞かれると、別にそうでもないから暗殺業界トップなのかどうかは分からない。 具体的には分からないけど、でもまぁ他の暗殺者ですらも俺の事を怖がるし、みんなが口々に俺の事を一番呼ばわりするからそんな気分になってしまっているだけだ。 音もなくターゲットを殺すから『無音の刃』なんて通り名まであるくらいだ。その名前を出せば、だいたいの暗殺者は道を空ける。 その通り名は暗殺者の中だけでなく、一般人も知ってる奴は知っている。まぁ一般人に関しては噂程度でしか知らないだろうけど。 まぁとにかく、暗殺者としての俺はなかなか名前が知れ渡ってる。もちろんいい意味で。 暗殺者って時点で「良い意味」で名前が知れ渡る事なんてないけど。その辺の突っ込みは置いといて。 とにかく暗殺者としては、有名人って事。 そんな俺でも、そこまで上り詰めた俺でも、兄貴は未だに憧れのまま。俺から見れば兄貴は、まだ背中しか見えない。 抜くどころか、まだ並ぶ事すらも出来ていない。 俺は自分で兄貴を超えたと思った事がない。思えた事がない。 暗殺のスキルでは間違いなく俺が上。兄貴よりも速く、確実に、気配なくターゲットをやれる。 どれだけ悪条件が重なっていたとしても、必ずターゲットを仕留める自信がある。 でも俺はそれしか出来ない。それ以外にない。 兄貴のように、暗殺以外にも他に何か出来る訳じゃない。
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