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「何だ。この体育館……」
体育館。確かに体育館だ。どこの学校にでもある造りの体育館。照明が合って、舞台があって、床がフローリングの体育館。
しかし置いてある物が違う。バスケットゴールとか、マットとか、そんな物は一切ない。
高い、3メートルほどの垂直にそり立つ壁。壁からはロープが垂れ下がっている。
無造作に立ち並ぶドッグランの様なゴム質の棒。さらに障害物競争に出てきそうな、這って進む用のネット。
ロッククライミングで使うような凸凹とした壁。ハシゴが付いていたり、ハードル走のように連続して壁が並んでいたり。
その他にも多くの障害物が用意されており、ちょっとした訓練所みたいだった。
消防士の試験でも行うのか?そう尋ねたくなるくらい、本格的な物が立ち並んでいる。
「んじゃランニング!」
パンパンと万丈圭吾が両手を叩いて生徒たちに指示を出した。
授業が開始された。それと同時に生徒達は淡々と体育館を周回しだす。
その障害物を素早く乗り越えながら走り出す。その手際の良さに少々驚いた。
何だこれは。ちょっとした軍隊じゃないか。そう思えるくらい、彼らが障害物を乗り越える姿は様になっていた。
ランニングと言っておきながら、その速さは異常だ。全員が自分の持てる速度の全てを費やしている。
つまり全員が全力疾走。ランニングじゃない。そんなに生易しい物ではない。
最初の準備運動なんて、生徒はだらける事が多いのだが、ここでは真逆。
全員が本気でランニングをしている。障害物に挑んでいる。
「異能力を持つってのはつまり、一般人が持ってない宝石を持っているのと同じなんだ」
「宝石……ですか」
唖然としている僕に、万丈圭吾は話しかけてきた。
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