十々海レッカ2

10/14
前へ
/415ページ
次へ
「何だ。この体育館……」 体育館。確かに体育館だ。どこの学校にでもある造りの体育館。照明が合って、舞台があって、床がフローリングの体育館。 しかし置いてある物が違う。バスケットゴールとか、マットとか、そんな物は一切ない。 高い、3メートルほどの垂直にそり立つ壁。壁からはロープが垂れ下がっている。 無造作に立ち並ぶドッグランの様なゴム質の棒。さらに障害物競争に出てきそうな、這って進む用のネット。 ロッククライミングで使うような凸凹とした壁。ハシゴが付いていたり、ハードル走のように連続して壁が並んでいたり。 その他にも多くの障害物が用意されており、ちょっとした訓練所みたいだった。 消防士の試験でも行うのか?そう尋ねたくなるくらい、本格的な物が立ち並んでいる。 「んじゃランニング!」 パンパンと万丈圭吾が両手を叩いて生徒たちに指示を出した。 授業が開始された。それと同時に生徒達は淡々と体育館を周回しだす。 その障害物を素早く乗り越えながら走り出す。その手際の良さに少々驚いた。 何だこれは。ちょっとした軍隊じゃないか。そう思えるくらい、彼らが障害物を乗り越える姿は様になっていた。 ランニングと言っておきながら、その速さは異常だ。全員が自分の持てる速度の全てを費やしている。 つまり全員が全力疾走。ランニングじゃない。そんなに生易しい物ではない。 最初の準備運動なんて、生徒はだらける事が多いのだが、ここでは真逆。 全員が本気でランニングをしている。障害物に挑んでいる。 「異能力を持つってのはつまり、一般人が持ってない宝石を持っているのと同じなんだ」 「宝石……ですか」 唖然としている僕に、万丈圭吾は話しかけてきた。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2000人が本棚に入れています
本棚に追加