十々海レッカ15

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結果的に黒を主体としたパーティ様のスーツを選んでもらった。 やはりと言うか、僕は黒が似合うのだろうな。そういう顔とか体をしているのだろうな。定員さんも「任せる」と聞いてからすぐに黒色を選んできた。 一番最初に黒を取り出してきた。 暗殺者と言う職業上、黒色を着用するのは非常に多い。暗殺着は黒一色だし、普段もそんなに明るい色は着ない。 そのせいか、僕自身も黒がマイカラーのような感覚になってきている。だから定員さんが黒のスーツを持ってきた時、少しばかりホッとした。 任せると言っておきながら、キンキラキンのジャケットなんかを笑顔で持ってこられたらどうしようかとか、そんな事を考えていた。 それは取り越し苦労に終わったのだが。何よりだ。 髪型も簡単にセットしてくれ、準備万端だ。さすがはプロ。 「例の件、手筈通りに頼む」 「はい。承知しております」 ボーイが軽くお辞儀をする。 ここのレストランのオーナーと料理長には、暗殺の件はきっちりと通してある。 つまり僕が暗殺者で錦之宮楓がターゲットなのを知っている。そして今日ここでその暗殺が行われる事も、きっちりと知っている。 その二人の指示で、僕たちに料理を全て出し終わった後、従業員たちは速やかに避難する事となっている。 避難と言うか、まぁ各々の家に帰るだけなんだが。 僕が暗殺者だと言うのを知っているのはその二人だけ。他の従業員たちは何も知らない。 僕が暗殺者で、錦之宮楓がターゲットだという事を全く知らない。この場が殺人現場になる事も、他の従業員は知らない。 従業員にはたぶん、二人きりなりたいからとか、そんな感じで話を通してくれているのだろう。 その辺りの理由付けは二人に任せてある。信頼できるから、別段とやかく注文を付けていない。
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