2000人が本棚に入れています
本棚に追加
「にし……」
錦之宮。そう呼ぼうとした。いつもみたいに呼ぼうとした。
でも途中で言葉が止まった。喉のあたりでつっかえた。
言葉を失った。
「先生!どう?」
クルリと錦之宮楓が体を回す。全身を見せる様に、いつもみたいに活発に動く。
ライトグリーンのドレス。淡い色で、綺麗なドレス。店内の光に生地が明るく照らされる。
スカートの丈が長めで、活発に動き回る彼女にとっては真逆の落ち着いたドレスだ。大人らしいと言うかなんと言うか。
胸元が控えめに開いている。少しだけ、首より下が見える程度だけど。でも彼女自身が普段そんな服を全く着ないから、とても新鮮に見えてくる。
そこに不覚にも目を奪われた。普段見た事がない彼女の胸元に……首より下の、ちょっとした肌色に、ほんの少しだけ目を奪われた。バレたらまた錦之宮におちょくられる。
男のさがと言うものには、さすがの暗殺者でも逆らえない。
髪は束ねてセットしており、そのドレスと同じく大人びた格好をしていた。よく見れば軽く化粧もしてある。
元気で活発。子供っぽいイメージだった彼女がそんなドレスアップをしてくるとは思いもしていなかった。
していなかったから、虚を突かれた感じで驚き、言葉を失った。思考が一時停止した。
ギャップと言うのだろうか。不意にも、不覚にも、情けなくにも、僕はその姿に緊張してしまった。
歳が5つ以上離れている女子高生に、見惚れてしまった。
変態教師!今にも錦之宮楓の声が飛んできそうだ。
僕は思わず彼女から目をそらす。
最初のコメントを投稿しよう!