十々海レッカ15

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「錦之宮……」 「あ、勘違いしたらダメだよ! 今日はすっごく楽しかったし、先生の優しさも本物だって知ってるから。建前なんかじゃないって、分かってるから」 理解してるから。 錦之宮楓はそう言いながら満面の笑みを浮かべる。 「知ってたのか……?」 「知ってたって言うか……」 もしかしたら赤霧孝之助との会話を聞かれていたのか……? 僕の作戦が、どこからか漏れていたのか……? 絶対に悟られないようにしていた。気付かれないようにしていた。 それを知るだけで、今日と言う楽しみが、とても切なく感じると思っていたから。心が締め付けられると思っていたから。 それこそ彼女がいつか言ったみたいな。死刑囚が最期の食事を選べると言ったみたいな。そんな寂しい感覚に変わってしまうから。 もうこれで最後。これ以上はない。これ以上は望めない。望んではいけない。 そんな考えのもとで、今日を過ごして欲しくなかった。僕との時間を過ごして欲しくなかった。 そんな考えのもとで遊園地や、水族館や、動物園に出向いて欲しくなかった。 そんな考えを胸の内に秘めながら、笑ったり楽しんだり、はしゃいだりして欲しくなかった。 そんなの。楽しくなる訳がない。心から遊べる訳なんてない。 だから僕はあえて、錦之宮楓には暗殺の事は話していなかった。話していなかったと言うよりも、むしろ隠し通そうとしていた。 秘密にしていた。決して悟られないようにしようとしていた。
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