十々海レッカ15

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「気がつくよ。先生の顔を見てたらさ」 「僕の……顔?」 「そう。先生、分かりやすいもん」 僕が、分かりやすい? 暗殺者の僕が、表情から考えを読み取られたとでも言うのか……? 暗殺者である以上、僕は極力考えを悟られないためにポーカーフェイスを心がけている。心がけていると言うか、そもそもそんなレベルではないか。 幼少期からその訓練を受けている。どんなに心が動じても、決して顔には出ないように。そう言う訓練を、小さい頃から受けている。 ヒジリほどではないが、僕の表情だって相当読みにくいはずだ。同じ暗殺者でも、僕の表情から考えを読み取るのは不可能なはずだ。 はずなのに。 そんな僕の表情が分かりやすい……? そんなはずは……。 「先生さ。私の事を考えてくれてる時、凄く表情に出るんだよ?」 「……そうなのか?」 「うん。自分ではポーカーフェイス気取ってるつもりだったでしょ?」 「うっ……」 気取ってるとか言われた。しかもぐうの音もでない。女子高生に考えている事を読まれていたのでは、暗殺者として返す言葉もない。 そんなにも分かりやすかったのか?そんなにも表情に出ていたのか? 錦之宮楓に言われておきながら、それでも信じられない。信じられないけど、彼女が言うのなら事実なのだろう。 考えを見透かされたのだから、それが何よりの証拠だ。 ターゲットに悟られる程に、僕の刃は鈍ったのか。僕の顔の仮面は、崩れてしまっていたのか。 暗殺者として、堕落してしまっていたのか……? 彼女にそれだけ、情を寄せてしまっているのか。距離を詰めてしまっていたのか。 彼女を見る目が、僕の中で知らず知らずに変わっていってしまったと。 そう言う事なのか……。 ターゲットとしてではなく、別の何かとして見てしまっていたと。 別の何か。大切な存在として。僕の中の、かけがえのない存在として、彼女が居座り始めているのだと。 だから僕は、暗殺者としての自分を保てなくなっている。彼女に、こうも近く寄り過ぎている。 そう言う事なのだろうか。
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