十々海レッカ15

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「違うよ、先生」 「違う……?」 「そう」 今日と言う日を、彼女は何よりも楽しんでいる様に見えた。その笑顔を見ていると、心の隅で、もしかすると生きる希望を持ってくれているかもと。 またこうして遊んだりしたいと。これからも生きていたいと。 そう考えてくれているのではないかと、思っていた。死にたいと言う意思を、考えを、もしかすると変えてくれるのではないかと。 そう思っていた。そう願っていた。 僕に足りなかったのは君の意思だ。錦之宮楓。君の心の声なんだ。 僕が君の事を守ると決意できなかったのは。世界を敵に回してもいいと決断しきれなかったのは。 誰よりもまず、君が君自身の死を望んでいたから。だから僕は、君を守る決断が下せなかった。決意が固まらなかった。 でももし、ここで君が考えを変えてくれるのなら。生きたいと、そう願ってくれるのなら。 君がそう言ってくれるのなら。 僕はその願いに、この身を持って応えよう。全力で、応えてみせよう。 君がそう言ってくれれば。そう願ってさえくれれば。 僕は……。 「私ね。今日を過ごしたから、死にたいと思えたんだよ」 「どういう……」 事だ……。 今日を過ごしたから? 彼女にとって今日と言う日は、つまらないものだったのか? 退屈な1日だったのか? 一瞬ではあるが、僕の中に渦巻いた不安。 しかしそれは間違いだと、すぐに気がついた。 彼女の笑みを見て、気がついた。
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