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「十々海先生を傷つけたくない。
お母さんとお父さんがいるから、死にたいと。力を封印したいと願ったのと同じ」
その笑みは、親子面接の時に彼女が両親に向けていた笑みだった。
優しく包み込む様な笑み。肉親に向けるような、分け隔てのない笑み。
その笑みを見た親子面接の時、この子は両親のために生きて、両親のために死にたいのだなと。
両親がこの世に存在しているから、死にたいのだなと。
そう思った。
両親がいるこの世界を壊したくない。大切な人が生きていられる世界を守っていたい。
だから死にたい。いつ暴走するか分からない自分の命を消してしまいたい。暴走する前に、力を封印してしまいたい。
両親がいるから、存在しているから、死にたい。殺してほしい。
彼女の真髄は。彼女の死にたいと言う意思の裏には。両親の姿があったんだ。
「お父さんとお母さんが殺された時さ、正直どうしようか迷ったの。
力を全部解き放って、あの暗殺者ごと全てを吹き飛ばしてやろうかと思ったの」
彼女はそんな事を言いながら、少しだけ僕に悪戯な笑みを浮かべる。けれど僕は、それに応えられるだけの余裕がなかった。
でもね。
黙って聞く僕に、彼女は続ける。
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