十々海レッカ15

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彼女は僕に言う。頼む。お願いする。依頼する。 暗殺者の僕に、殺しの依頼をする。 手が震える。強く噛んだ歯が、ギリッと音を立てる。表情が、自分でも分かるくらいに歪む。 君の未来を望む僕に。 君の幸せを願う僕に。 君の笑顔を求める僕に。 君は言うのか。残酷にも、それを言い放つのか。 殺害と言う名の依頼を、僕に突きつけるのか。 「それが君の……」 君の幸せの形は……。願いの形は。意思の形は。 それでいいんだな。 それが君の幸せであるのなら。それが君の願いであるのなら。それが君の決断であるのなら。 それが君の……。 「望みなんだな……?」 君の望みであるのなら。 君が逃げたいと望むのならば、僕はそれに全力を注ごう。世界の果てまで共に逃げよう。 君が幸せになりたいと言うのなら、僕が幸せにしてやろう。君の幸せを、僕の全てを持って体現しよう。 君が生きたいと願うなら、僕はそのために行動しよう。君が生きていられるために、全てを尽くそう。 そして君が死にたいと望むのなら。 本当にそれでいいのなら。 それが君の願いであるのなら。 「はい」 僕はそれに。 全力で応えよう。
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