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「お久しぶりです」
「えっと……。君は……」
違う。あの子じゃない。でも一瞬見間違えた。
髪が長くて、顔立ちが綺麗で、しかも身長も同じくらい。
一瞬ではあるが、あの子のような気がした。でも違った。
当たり前だ。あの子は……。
錦之宮楓は10年前に、死んだのだから。
僕が殺したのだから。
今ここに存在しているはずがない。
そもそも生きていたら彼女も29歳。アラサーだ。こんなに若い訳がない。
「覚えてませんか?」
「……すまん」
僕の事を「先生」と呼ぶのだから、確実に学校の生徒なのだろう。
僕の勤める学校の卒業生なのだろう。
そして僕が担任を受け持った生徒なのだろう。
だが見た感じ高校生のようだし。
高校生くらいの歳なら、卒業して間もないはず。そんなに時間は経っていないはず。
担任を受け持っていたのなら、覚えているはずだけど。
そんなに記憶力が弱いつもりはないんだが……。
はて……。
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