第1話 逃走

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そのゲームセンターは、中学生になった頃からよく行っていた。 地元の不良のたまり場になっていた。 小学生の頃はそれが怖く、行きたくても行けなかったのだが、中学生になると、彼らは県外の高校へ進学したらしく、いなくなったので、俺は友達と行くようになった。 いつもは学校帰りに一緒に入店するのだが、この日は違った。 UFOキャッチャーのコーナーでは、当時の俺と、同い年位の四人の少年がすでにプレイ中だった。 彼らは俺に気付くと「おぅ」と挨拶を交わす。 一人の少年が「どうだったぁ?」と言う。 俺はUFOキャッチャーの操作台に腰をかけ、煙草をズボンの左ポケットから取りだし一本取ると、ライターで火を点けながら言う。 「楽勝。盗ってきたぜ。ホラ、この通り」 と言って俺は、革ジャンの左ポケットの中から何かを掴み、操作台にそれをばらまいた。 それはチロルチョコ。十個ほどだったように思う。
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