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目が覚めると嗅ぎ慣れたくない消毒液の匂いと、見慣れたくない天井が見えた。
そうか、俺....あのまま、病院に担ぎ込まれたのか。
何度も病院に入院することが多いためか、この頃の俺は人が死ぬということがどうゆうことなのか知らなかった。
恐らく、何度も入退院を繰り返していたから同じ年頃の友達が、亡くなったりとか。
そういうのも、悲しいことに日常になっていたからだと思う。
俺はベッドに横になって口には酸素マスクをつけて呼吸していた。
俺から見て右側には嗚咽を漏らしながら泣いている母親。
そんな母親を慰めるように横に立っている父親。
今にも泣きそうになっている当時、高校生だった姉貴。
そして、左には俯いて瞳に涙を溜めている拓誠の姿。
そうしていると、病室のドアがノックされ一人の医者が姿を表した。
拓誠の親父さんで、栄第一病院の院長さんだ。
「この度は、私の責任で大事な息子さんを危険な目に合わせて申しわけない」
「そんなことっ....ないです」
「栄先生には大変お世話になりました。親なのにこの子の体の異変に気づくことができなかった」
だから、貴方を責めることなんて出来ない。
厳格な父親で今まで一度も涙を流したことがない、そんな人の悲しそうな表情を見てもその時の俺には何も分からなった。
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