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当時の俺にはお兄さんが考えていることが理解できないでいた。
だけど、小さいながらもお兄さんが凄く凄く悩んでいることは分かった。
だから、俺はお兄さんの名前を呼んで、顔を上げた瞬間に高らかに宣言した。
「そんなの、決まってんじゃん!だって!
本気で心配してくれる友人が居るんだ。
し....んじゃったら........もう、その人に会えなくなるから」
そんなの絶対に嫌だ。そう言うと、お兄さんは俺に、優しく抱きついてきて静かに声を漏らさないように泣き始めた。
そして、ひとしきり泣いた後。俺の頭を撫でてとびきりっの笑顔でこう言った。
「お前って、強いなっ!!」
そんなことないよ。本当に強いっていうのは、拓誠みたいな人のことを言うんであって強くはないよ。
それに、今の拓誠からの受け売りだし。
それから、お兄さんは涙を拭ってありがとうと俺に言って、病室を後にした。
俺も後日。退院出来ることになって、退院してから一度も会っていないし。
名前も分からないし。
分かっているのは、金髪ってことだし。
そんなの、染めれば分からなくなることだしな。
いつしかそのことも、俺は忘れていた。
だから、八年後の今になって主治医として出逢うことになるなんて思いもしなかった。
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