春潮風

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まだ潮風に冷たさが残る4月の昼下がり、私が鍵尻尾をふりふり散歩していた時のことです。 海にせり出た崖の上で、少年が一人スケッチブックを抱え込み鉛筆を走らせていました。 ここからは海だけでなく、オリーブ畑や青い屋根の別荘、少し遠くに霞みがかった山を臨むことができます。 別荘の屋根の位置はちょうど海と重なって、別荘の上に海が乗っかっているようです。 少年は屋根と海を交互に突き、どうしたものかと思案しているようでした。 しばらく考えた後、少年は絵の具を箱から取り出したので、私は少年がどうするのか気になって近づいてみることにしました。 すると私がさくりと草をかき分けただけで、少年はびくりと肩を跳ね上げ振り返りました。 私はぎょっとしました。 少年の顔に、見事な青タンができていたのですから。 少年をよく見ると、あちこち痣だらけで肩掛けカバンもぼろぼろでした。
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