1人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ潮風に冷たさが残る4月の昼下がり、私が鍵尻尾をふりふり散歩していた時のことです。
海にせり出た崖の上で、少年が一人スケッチブックを抱え込み鉛筆を走らせていました。
ここからは海だけでなく、オリーブ畑や青い屋根の別荘、少し遠くに霞みがかった山を臨むことができます。
別荘の屋根の位置はちょうど海と重なって、別荘の上に海が乗っかっているようです。
少年は屋根と海を交互に突き、どうしたものかと思案しているようでした。
しばらく考えた後、少年は絵の具を箱から取り出したので、私は少年がどうするのか気になって近づいてみることにしました。
すると私がさくりと草をかき分けただけで、少年はびくりと肩を跳ね上げ振り返りました。
私はぎょっとしました。
少年の顔に、見事な青タンができていたのですから。
少年をよく見ると、あちこち痣だらけで肩掛けカバンもぼろぼろでした。
最初のコメントを投稿しよう!