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私が感心しながら絵を見ていると、少年はぷるっと膝を震わせました。そして慌てて起き上がったかと思うと股間に手を当て草むらに走って行きました。
少年の絵がもっと見たくなった私は、爪を出してページをカリカリ捲りました。
豊かに葉を茂らせるオリーブ畑や、太陽をきらきらと反射する砂浜、空や海に燃え広がるような夕陽など、拙くも素直な感性で描かれており、こちらが清々しくなるような絵たちでした。
あっ、と言う声に振り向くと、少年が泣きそうな顔で駆けてくるところでした。私はしまったと思いスケッチブックから跳びのきましたが、それがあんなことになろうとは。
強い風に舞い上がったスケッチブックは鳥の翼のようにページを羽ばたかせ、海に真っ逆さまに落ちていってしまったのです。
少年はページを掴むことに成功しますが、その一枚を残してあとは海の上をゆらゆら漂うばかり。
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