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少年は息を飲み、目を見開いてぎゅっと結んだ手を震わせています。そして、顔がくしゃくしゃになるのを歯を食いしばって堪えながら、ひっくひっくとしゃっくりをあげ始めるのです。必死に泣くのを我慢している少年に、私は足元をうろうろするばかりでした。
どうしよう、どうしよう、
とても大切なものだっただろうに。
「あら、こんなところにいたの?」
私が困り果てていると、柔らかな少女の声が聞こえました。
少年はいまにも溢れそうな涙を慌てて拭います。少女は私を抱き上げました。少女ーお嬢様は私の大好きな甘い匂いがします。
お嬢様は少年の持っている絵に気づき、目を輝かせました。
「まあ、これうちの別荘よ!青い屋根の!」
ようやく落ち着いた少年は、俯き気味にお嬢様の顔を覗き込みます。やはり見事な青タンは隠しようがなく、お嬢様はとても驚いてしまいました。
「あなた、怪我してるじゃない!うちの子と一緒に別荘にいらっしゃいな。ね」
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