第二章:喜びと苛立ち

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 アニメートは、光の世界に身を置きながら魂の世界を感じ取り、それを感覚的に操作し、意志の力で二つの世界の波長を合わせる術である。  クークラは、魂の世界を感じ取ることは出来る。  操作するという意味もだんだんわかってきた。  しかし、異なる世界の波長を合わせるという事が、感覚的にまだ掴めていなかった。  大気に満ちる魂に集中すると同時に、光の世界にある人形にも意識を凝らす。  ふと、かつてこの人形に自分が乗り移っていた時の事が頭に浮かんだ。  どんな感覚で人形の内部に入り、染み渡っていけばいいのか、クークラは無意識的に理解できる。  ボクならば、この身体に乗り移るときには……。  改めて、そのやり方を意識しながら。  それを教え伝えるように。  クークラは大気に満ちる魂を意識し、導いていった。  自分が乗り移るときの感覚をしっかりと自覚しながら、その真似をさせるように、大気に満ちる魂を人形の隅々にまで渡し通す。  クークラはその作業に没頭した。  集中する。  自分という境界と、物質と、たましいの世かいとのへだたりがわからなくなっていく。  まるで、せかいには、じぶんと、にんぎょうと、おおきなたましいしかないような。  それも。  やがて。  ひとつに。  なって。  ……  …………  ふと我に返ると、目の前で人形が動いていた。  光の世界の中で。  人形は子猫を思わせるような、自由で気まぐれな動きをしていた。
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