第一章:ある夏の日

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04.  泊まりのシフトの時にあてがわれている自室に戻って、キキさんは初めてアニメートの術を成功させた時のことを思い出していた。    あれはまだ自分が少女と呼ばれる年代だった頃の事。  初めて施術に成功したアイテムはデッキブラシ。  もとはマスターからもらった武器としての棒で、冒険中に折ってしまってブラシに仕立て直したものだった。  あの時は、マスターからも褒められ、笑顔で頭を撫でてもらった。  その喜びは、今も心の中の大切な場所に仕舞ってある。  もう一つ思い出した。  アニメートを使えるようになってから、少し経った時のこと。  その愛用のブラシを動かし、円卓の間を掃除させていた。そして自分は帳簿を付けていたのだが、眼を離していると焦げた匂いがした。  ブラシは部屋を掃除しろという命令のもと、火の入ったペチカの中までブラシをかけていたのである。  初めてアニメートを成功させたブラシは、それで失われた。  あの時、マスターはどうしてくれたのだっけ。  とにかく、火には気をつけるように、それを注意され怒られたのは覚えている。  しかしその後。  そうだ。  マスターの最初の仲間でもある先輩のルサが、キキさんの失敗を笑った。マスターはそれを嗜めて、何故失敗したのか、一緒に考えてくれたのだった。少し気は早いが、クークラが失敗した時のフォローも考えておこう。
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