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米だ。
どう見ても米だ。
高校のボロい寮の部屋の小さな窓に、何かがよぎった気がした。
小さな衝撃音があったので、何かが落ちてきたのだろうとすぐに察したけど……。
米だ。
隣に建つ立派な『富士寮』との間の中庭…まあ、富士寮から見れば裏庭に米が落ちている。
色も艶もてっぺんのへこみもどう見ても米で、それがつっ立っている。
けど、サイズが…軽く高さ2メートル以上はあるよな…。
こんなバカデカイものが落ちてきたわりには衝撃が随分と小さかった。
古くてボロい『中山寮』の四階の自室の窓からしばらくじーーーっと米を見ていた。
すると、米の凹みの部分の色がちょっと濃くなった。
かと思えば少し色合いが変わる。
どうやら中で何かが動いているのが透けているようだった。
え?もしかして、生きてる?
そう思った途端、中からぬるりと何かが出てきた。
裂けたのか、それともすり抜けたのか、それはよくわからなかった。
ぷるんぷるんとしたゼリーみたいなクリーム色ダンゴムシの背中が透明に透けていて、中にでっかい小豆のような目らしきものが8~9コ浮かんでいた。
ダンゴムシと同じように短い足がうじゃらうじゃらと動いているが、ピンクやグリーンで妙にファンシーなカラーだ。
腹にあたる部分にも背中よりは小さいが、小豆みたいな目がいくつもあるようだった。
そんな様子を観察してた時間が異常に長く感じられた。
けど、実際は一秒か二秒のはずだ。
オレはそのよくわからないモノを目にした瞬間に、そのまま後ろにぶっ倒れて意識を失ってしまったのだから。
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