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「不機嫌だね、啓介。機嫌をなおして。」
自分がオレの不機嫌の原因なのに、なぐさめるようにやさしく頬や頭をなでてくる。
オレもオレで、ずうずうしい言葉にプッと頬を膨らませながらも、ついついその手に甘えてしまう。
「ああ…やっぱり啓介は可愛いね。ねぇ『この前』みたいにして、いつか本当に僕の子を産んでくれる?」
「はっっっ!?産めるわけないだろっっ!」
「大丈夫、だいたいピンポン球と同じくらいだから。これから何度か繰り返せばきっと不安もなくなるよ。」
「っっっ意味が分からないっっ!」
「うん、わかってるよ。啓介は『習うより馴れろ』のタイプだものね。」
米田先輩はやっぱり人類の常識に疎い。
だからこんなバカなこと…。
……あれ?
産めないってちゃんと理解してもらえないと、何度もあんなことさせられるってことか?
「先輩、知らないみたいだけど、人類の男は子供は産めないんですよ。」
「ははっ。何を当たり前のことを言ってるんだ啓介。もちろん知っているよ。」
たまらず吹き出した先輩に、さらに強く抱き込まれた。
「ああ、そうか、僕の言い方が悪かったんだね?じゃあ、言いなおそう。啓介、いつか僕たちの卵を産んでおくれ。その気になるまでちゃんと待つから。そして、ちゃんとその気にさせてあげるから。」
……だめだ。
まったくわかってない。
子供が産めないんだから、卵なんかもっと産めるわけないのに。
いくら言っても通じなさそうだ。
ふぅ…とため息をひとつついて脱力した。
なんだか、めちゃめちゃなで回されてるけど、振りほどくのもいまさらだ。
ああ…なんか、またチュッチュされだした。
もう……。
イケメンだけどキモイ宇宙生命体とキスとか、絶対ヤだってずっと思ってんだからな、オレ。
空気が甘いし、なんだか心までトロトロになっちゃってる気はするけど。
こんなキス…ヤなんだぞ。
でも、嫌がっても、どうせ振りほどけないし。
後ろからギュッと抱きしめられてチュッチュされるのって安心感あるよな。
……『もうヤダ!!!!』ってマジ切れしたら、ちゃんと放してくれるし。
……それまで。
もうちょっと………。
《終》
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