1:米が落ちてます

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米田がなんか言ってる。 音としては聞こえてるし頭に入ってきてる感じはするのに、全然聞こえてる気がしない。 何か言われて、オレが必死で頷く。 「ワカッタ、ちゃんと状況を理解した。」 初めて英語の授業でアイキャンスピークイングリッシュと言ったときのように、棒読みのセリフが口からこぼれる。 それに満足そうに米田が頷いた。 「で、アンタは…。」 「アンタなんて言わないでよ。僕は、キミの『先輩』だよ。」 米田が柔らかく綺麗な笑顔でニコリと微笑む。 「………せん…ぱい。」 「さあ、僕の名前を呼んでみて。」 「米田…せんぱい?」 「はい、良くできました。ああ、そうだ、まだキミの名前を聞いてなかったね。」 「オレ…の名前は…。溝口啓介(みぞくちけいすけ)。」 「そうか、啓介。今日からよろしくね。」 強い力でがしっと腕をつかまれ、そのままぐっとハグをされた。 そして、ちょっとオレの顔を見つめると、こめかみに吸い付くようなキスをした。 そのまるで何かが流し込まれるようなキスで、オレの混乱はピタッと治まり冷静を取り戻した。
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