2:状況確認完了です

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「それで、米田先輩は、ここで何を学ぶつもりなんですか?」 どうにかショックから立ち直って聞いた。 米田先輩は、体験学習の場として、この地球、日本の洞仁学園を選んだという。 これから三ヶ月、ここで過ごすらしい。 ウチの学校はスポーツと進学とに力を入れている私学で、普通なら転入生など来るはずがない。 米田先輩は転入生ではなく、普通に三年生としてすごす。 ………普通はそんなこと、出来るはずないのに。 先輩は柔らかな微笑みをたたえてオレの手を握った。 それにしても、なんで狭いベッドに膝つき合わせて密着して座ってんだろ。 「今ね、僕たちの周りでとても地球の文化がアツいんだ。今といっても、20年くらいだけどね。地球のマンガ、アニメ、小説が流行っていて、僕が好きなのはその中でも日本のスポ根ものなんだ!野球、サッカー、バスケ、バレーボール…たぎる青春!過ぎた友情!ほとばしる汗!涙に潤む瞳!そしてドピュドピュするその他の分泌液!すばらしいよ。ねえ!そう思わないかい?」 「あーまあ、たしかに…??」 ほとばしる汗くらいまではわかるんだけど、その他の分泌液ってなんだ? 「せっかく体験実習をするなら、見たり読んだりするだけでも素敵なスポ根ワールドを実際に体験したくてここに来たんだ。だから啓介もぜひ協力してくれないか?」 なるほど、オレがぶっ倒れた後、卓球の練習着に着替えさせられた理由がわかった気がした。 「それはいいですけど、でも、オレができることとかないと思いますよ。」 なにせ、野球、サッカーを筆頭に全国大会常連の部活がわんさかあるスポーツ強豪校にあって、オレの所属している卓球部は…。 ジュニア最強ペアが入学してくるからと、廃部になっていたものを復活させ、全国大会に出るために人数あわせで普通科から部員を引き込んだ即席強豪チームなんだから。 オレは家が近いからって学費免除のある特別進学コースを受験して、うっかり合格してしまったものの、この二年からあっさり普通科に編入されることが決まってしまった落ちこぼれだ。 普通科になってしまったために高い学費にヒィヒィ言ってる親は、勤めてた工場が閉鎖になって転勤。 それなりに責任のある立場なので、事業を統合された別の工場近くへ引っ越しが決まった。 そしてオレは、学校を辞めるかどうかの瀬戸際に立たされた。
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