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「そんな顔をしなくても。大丈夫、僕は女には興味がないから」と、リノは椅子の上で両膝を立て、お腹の辺りにいるクマを優しく撫でた。
「そう言ったなら安心する?まぁ、冗談はこの位にして、サエキヒカリ、君はここに集められた実験対象者の『共通点』に気付いてる?」
ヒカリはベッドの端に腰を下ろし、リノと対峙した。
「皆、病気を持ってる……ことかな?」
「正解。やっぱり君は賢い」とリノは満足そうに頷く。
アラキダさんは、数年前に乳癌を患い、右乳房を摘出したらしいし、カクタさんは、自動車事故で下半身不随になり、車椅子で生活をしている。その他の対象者も体に何かしらの病気を抱えていると、ヒカリはここでの生活を通して気付いた。
「君は一見、外傷もないし、健康そうに見えるけど、何の病気を持ってるの?」
リノは訊ねる。
「私は、白血病で……」
「急性リンパ性白血病、血液の癌だね。子供の白血病は80%以上の格率で治るって聞いたけど」
ヒカリは頷いた。13歳の時に発症し、一年間の闘病生活を経て、今は定期的に検診に行く位まで回復した。抗がん剤で抜けた髪も生え、再発も今の所は確認されていない。
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