シナナイ ミライ

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施設に到着した日、これから始まる新薬「エターナルライフ」の臨床実験について改めて説明を受けた。 施設の代表者でモリと名乗る男は、すらっと背の高い甘いマスクの青年で、黒縁眼鏡を掛けていた。年の頃は30前後で、研究者としては若く、俳優の様な容姿にヒカリは戸惑った。 施設では、一日のタイムスケジュールが決まっていた。 朝6時に起床して、夜10時に就寝する。規則正しい生活と適度な運動、それにバランスのいい食事。 また未成年者には学習の機会が設けられ(もちろん成人で授業を受けたい人も受講可)、会社勤めをしていた人には、在宅勤務という形で、個人の仕事をするのも可能だった。 基本的に自由時間が多く、希望があれば、内職のアルバイトも出来る。給料で、施設内にある本屋やスーパーなどで買い物も可能だった。 就寝前にスタッフが各部屋を周り、「エターナルライフ」を配布する。薬は、白と黄色のツートーンのカプセルで、子供も成人も関係なく、一日一錠の服用が義務付けされていた。 薬の作用の過程を見るために、月に一度、健康診断が行われた。健康的な生活のリズムを身に付ける事で、薬の効果も上がると説明を受けたので、対象者は皆、きちんと規律を守って日々の生活を送っていた。 施設内の生活は退屈ではあったが、快適だった。
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