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アラキダさんは嬉々とした表情でヒカリに詰め寄った。他人の不幸話を楽しそうに語るアラキダさんが怖くて、ヒカリは体一つ分、後ろに下がった。
「丁度彼がゲームの会社を設立した頃かしら。小学生のくせに会社設立なんて生意気よね。でも、ほら、天才だから。業績は彼自身の知名度もあってうなぎ登りだったみたいなんだけどね、子供が良くても親がね、お金が絡むと人格変わっちゃうって言うじゃない?要するに自分の子供が稼いだお金を親同士で取り合う形になったみたいなの」
「ハリウッドの人気子役みたいな末路ですね」
「彼の場合、もっと残酷よ」とアラキダさんは立ち上がり、湯船の縁に腰を下ろした。体が火照って、ピンク色に染まっている。ヒカリも浴槽から上がり、アラキダさんの隣に腰掛けた。
「最終的には父親が、母親を銃殺しちゃったみたいよ。父親は服役中で、彼は母方の親戚に引き取られたみたい。母親の死のショックで、精神病を患って、入院中なんて記事には出てたけれど、あの様子じゃ、精神病もかなりの重度みたいね。ねぇ、知ってる?この間、カクタ君がからかって、彼がいつも持ってるクマを取り上げたのよ。そしたら発狂する位の勢いで襲い掛かって来たらしいの」
カクタさんも実験対象者で、20代の男性だ。元はトラックの運転手だったらしい。気さくで皆を纏めるのが上手く、ムードメーカー的な存在の人だった。
「あまりの形相に、あのカクタ君も、『アイツは苦手だ』ってぼやいてたもの。要注意人物ね。ヒカリちゃんもあの子には気を付けた方がいいわ」
浴室から出ると、また白いスウェットに着替えた。先に部屋に戻るというアラキダさんと別れて、洗面台でヒカリは髪を乾かした。
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