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「おい、の太郎聞いてるのか? もしかして、お前等俺を全無視か?」
『い、いえとんでもない! 今、武(たける)くんってゴキ神だなぁって思ってたんですよ。みんなは就寝中でしょうね。安心してるんですよ。此処は居やすいですから』
今の会話でご察しかと思いますが、ご主人である武くんは、僕達ゴキブリと会話が出来るようになってしまったのです。僕が言うのもなんですが、かなりファンタジーみたいな話です。いやぁ~初めて会話が通じた時は嬉しかったなぁ。武くんなんて、嬉しすぎて僕のお家メチャメチャ激しく揺らしてたもんなぁ。あの時はあらゆる方向に飛ばされて壁にぶつかりまくって痛かったけど、それ以上に喜びがあったものです。
「あっそう。ってかゴキ神って何? ちょっと嬉しい」
武くんはとても嬉しそうです。武くんってやっぱり良い人です。生まれ変わったら、武くんのようなゴキブリにも優しいイケメンになりたいですね。
『だって武くん、ゴキブリ達に優しいんですもん。本物の神よりきっと優しいですよ。だから、ゴキブリの神、略してゴキ神です!!』
「本当に? いやぁでもさぁ、ゴキブリもその謙虚さで行けば、神同然だよ。人間なんて淀んでるぞ。何時も思惑や妬みとかって黒々とした感情が渦巻いてやがる。それに比べたらお前等の可愛さときたら……」
このように、武くんは僕達を愛するだけに留まらず、僕達に敬意までもを払ってくれるのです。こう言うところが神です。ゴキ神です。
武くんは、思い付いたように突然手を叩いて、僕に言いました。
「お前等がさぁ、人間にぎゃふんと言えるようになれば良いんじゃないのか?」
『む、無理ですよぉ! 僕等が人間に勝てる日とか一生無いです。僕等はあの攻撃を掻い潜る他生きる方法なんて無いんです!!』
悲しい話だけれど、それが現実なのです。
『それに、別にぎゃふんと言わせたいとかじゃなくって、純粋に人同様愛してもらえるようになれれば……って言うか人になれたら、良いのになぁ』
「あ~擬人化なぁ。俺がお前で、お前が俺だったらどうだったんだろうなぁ」
『あ、一度考えたこともあるんですけど、それはやっぱり嫌だなって思います』
「嫌? 何でだよ。俺の顔じゃ飽き足らないってか?」
ちょっと不機嫌そうに頬を膨らます武くん。いえいえいえ! そう言う意味じゃないのです!! 僕なりに色々思っての結果なのです。
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