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だって、武くんはとっても良い人で、こんなゴキブリにも普通に接してくれるようなゴキ神なのです。仮に僕が武くんで、武くんが僕だったらどうでしょう? 多分、ゴキブリを凄く嫌うと言うわけではありませんが、やっぱり出てしまうと潰しにかかろうとか、逃げてもらおうとか思うと思うのです。僕達だって、人間の感情も分からないことは無いのですから。そしたら、仮に僕になった武くんを潰してしまうかもしれません。他の彼等だって、少なくともこうして飼ってもらってはいなかったことでしょう。これは、あくまでも僕が始めから武くんだったら、を想定しての話です。今の僕が彼と交換出来たら、それこそ今の関係は然程変わらないでしょう。けれど、どちらにしても、僕は人間である武くんが大好きです。この思いを伝えると、武くんはニコッと笑って、「そうか」と言いました。
「でも、それにしてもゴキブリばっかり嫌悪感丸だしにしやがってなぁ。そこら中に無視なんていっぱいいるのに、蝶とかは綺麗がられ、カブトムシやクワガタはかっこいいって言われる。変だよなぁ」
『そうですねぇ~でもまぁ、大多数はこの体とか、動き? が、嫌いって言ってますよね。僕達、走り方変なんですかねぇ?』
「ん~ちょっと変かもな。でも、人間でも走り方変なヤツなんていっぱいいるしなぁ。小学校の時の大田は酷かったぞ? こんなん」
武くんはその場でその動きをしてみせた。そ、そんな動き走る時に普通するっ!? ゴキブリにも分かる異様さに、僕は思わず大声で笑ってしまいました。お腹がよじれそうです。僕の声で仲間達が目を覚ましました。
「お、お前達。起きるの遅いじゃないか」
武くんが話しかけると、皆は嬉しそうに話をし出しました。素敵だなぁ。本当に、姿かたちがこうでなかったら、僕達も人間になったような気持ちになれる。幸せなひと時は、一晩中続きました。
ですが、自体が急変したのは、家に武くんのお母さんが武くんに内緒でこっそりとやって来てしまったこと。
「きゃあああ!!」
武くんのお母さんは甲高い悲鳴を上げて、腰を抜かしてしまいました。それもそのはずです。武くんの部屋の中には、何匹もの僕達ゴキブリがいたのですから。
武くんが帰ってくると、玄関ではお母さんが物凄い剣幕で睨んでいます。武くんはまさか! と自分の部屋を見ます。大丈夫、僕達は無事ですよ!! 武くんは安堵しました。
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