忘れていた贈り物

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二ヶ月ほど経った頃。 おやすみを言ったあとに、隣で小さく名を呼ばれた。 妻は目を合わせたまま止まっている。 「どうした?」 「できた」 「何が」 「順調だって」 小出しに出され何だかさっぱり分からない。産婦人科というワードにやっと思考が動いた。今日、病院に行くのは聞いていた。最近体調が悪い、と横になっているサチコに診察を勧めたのは俺だ。何かの病気だと思って。 そういえば、トイレから出てくると首を傾げたり、カレンダーを眺めていることが頻繁にあった。 密かに自分で調べた結果、真っ直ぐ向かったのが産婦人科だった。 「喜んでくれないの?」 そう問う表情も曇っていた。不妊治療の最中なら、大喜びだったろう。新しい生命への希望をとっくに捨てた今、歓喜ではなく動揺しかなかった。 「どうしたらいい?」 妻は選択を迫った。以前はあれ程望んでいたのに、出産の道をすぐには選べなかった。頭が混乱しているせいもあるが、サチコが初産で高齢出産になるのが理由だった。 『怖い』俺のパジャマを掴んで言った。 「でも、これで俺たち夫婦になれるんだよな」 そして真剣な目で力強く訴える。 「産んで欲しい。俺たちの子を。俺だってサチコの体が心配だよ、でも全力で守るから。お前とお腹の子を」 サチコは、泣きそうで嬉しそうな顔になって、一回瞬きをしてから頷いた。
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