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×××××
『………ちょっと』
「何してる。早く座れ」
座るよ。
座るって
ここが、カフェならね。
『ココどこ』
「見て分かんねぇ?」
分かるから分かりたくないの!
「極上スイーツルーム」
『スイートルーム!だしココ』
頭を抱えたくなった。
『ちょっと待ってよ…そんな。アタシ…手持ち320円だけど』
「それ完璧、帰りの交通費じゃねぇか。上総の心配ソコかよ。カフェで売られてるタルトだがカフェ行くとは言ってねぇ」
『…あ~ヤダヤダ』
「ふ…何が」
スマホをテーブルへ置いてソファ…座ってやったよ。
部屋に入ってから忙[せわ]しなく動いてる一乗寺は…
お金持ってるの?
「当ててやるよ。女の友情なんざ、男で左右されるわ妙な男にカフェじゃねぇとこ、引きずり込まれるわ最悪」
『後者は正解。でも、円香との友情に口出ししないで。あんたには分からない』
円香は馬鹿だけど…
優しい馬鹿なんだ。
「…そうだな。色んな友情が」
あれ、納得しちゃうんだ?
『…つまんない男』
「あぁ?おらよ」
ガラ悪く、サクランボが乗ったお皿をテーブルに置く。
『……』
身体を起こしたアタシは、暫く…ツヤツヤした綺麗な…赤い…宝石みたいなサクランボに釘付けだった。
「……食わねぇの?」
『…何で隣に座ってるのよ』
「食わねぇのか聞いてる」
怒った様な声を出しても、ビビるって言葉を知らないアタシには効かない。
『初対面なのに偉そうな男』
「人の事言えるか?」
『言える』
「…本当に嫌なのは過去を思い出す事」
『ッ!』
この男…どこまで!
「食わねぇのか?」
笑いもせずに、ずっとアタシを見てくる視線から…逃げた。
違う…
逃げてたのは、この…
『綺麗なサクランボ…』
アタシが、触るのも。
触っちゃダメな気さえして手が…出ない。
だけど、自然と手が伸びてた。
一つ、摘まめば
『ッあ』
震える指がテーブルに落として
「ジレってぇ」
一乗寺はそれを、アタシの口へ押し込んだ。
『―甘…い…』
「……いつまで種…出せよ」
『…ッ』
「…泣きそうな顔すんなよ」
『ッ誰が!』
「この先…泣かせるのも俺だ」
グッと身体を乗り出した男の影がアタシに―…
『!?んッう…ッい、やッ…』
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