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ベリィッと円香を引き剥がす。
『円香軍曹…両目が¥になってますよ』
「ヤベッ…金じゃないのだよッ…高級ホテルの御曹司だからって訳じゃ…顔なのッ…」
どっちもどっちだ。
「お久しぶりです…高杉さん。お元気でしたか?」
『…お久しぶりですご覧の通り元気です上杉さんもお元気そうで何よりです』
営業スマイルは完璧だ。
「すみません…今回、当ホテルへご招待したのは私でして…。円香さんは協力して下さっただけなので、どうか」
上杉さんに真摯なまでに庇われた円香は、目じゃなく鼻を押さえちゃってるし。
また両目が¥に…
「俺が頼んだんだよ」
一乗寺には営業スマイルすら、向けてやんない。
「俺は知ってたんだ。あんたが俺を知らなくとも」
『!?』
思わず一乗寺を仰いでしまったのは、[あんた]呼びに変わったから…じゃない。
男の顔に見覚えも…やっぱ無い
『すみません上杉さん。ココへ警察呼んでいいですか』
「非常に困ります」
「人を変質者扱いかよ」
「やだぁ上総ったらウケるぅ」
ウケんわッ!
笑い合う3人に、妙な団結力を感じる。
『アタシを知ってたのは円香や上杉さんに情報を聞いてたから…こんなパーティーでアタシと近付く為?馬鹿馬鹿しい』
漫画ですか?
「色んな情報聞く前からあんたにゃ目を付けてたぜ?」
『警察』
「待て待て待て」
『あッ』
取り出したスマホを敵に奪われるなんてッ…
『返して頂けます?』
「やだね」
『ッ…』
殴りたい!
「高杉さん」
『…はい』
上杉さんへ渋々視線を向けると…遠慮がちに口を開く。
「今回、本当に強くお誘いした…円香さんにお願いしたのは私です。一乗寺、お前はあくまで…ついでだ」
『…え?』
「ついでかよ」
どうして…上杉さんが?
「お食べになられましたか?」
『…何を…イカ?』
「ゲソ唐じゃないよ」
「ゲソの唐揚げは、円香さんの好物でしょう?」
「ッ何故に知っ!?や…や~ん…嬉しぃ…ケド恥ズカシィ~…」
固くなった声に、マジで恥ずかしがってるんだって笑いそう。
「もう…2年になります」
ドクッ
『…』
2年…というフレーズに胸が
「お食べに…なったでしょう?美味しいサクランボを」
『―ッ!…まさか』
唇が、震えた。
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