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「―へぇ…経験者大歓迎だから貰っちゃおっかな」
『…』
「なぁんて、俺にはそんな権限ねぇっつ~の!ウケるぅ!」
微塵もウケない。
やっぱ間違えた。
「ちょっと写メらせてね?面接来たらオーナーに面通す系なのウチ~。俺ただの店長だしぃ」
面通す系の系って何。
バーテン募集に食い付いたけど
「マジ人手不足だし~オッケーなら即採用決めっから!俺じゃないよオーナーがだよ?って、当たり前じゃん!ウケるぅ!」
ウケん。
こんな馬鹿っぽい店長が仕切る緩い店、前とは違い過ぎる。
ショットバーは肌に合わないと呆れ半分、店内を見回した。
店は小さい…カウンター7席とソファ1つ。
そのソファに座ってたアタシは
「電話に出んわ~…ウケる!」
サムいけど、案外…狭いバーは好みだ。
「あ、お疲れ様です!剛ッス」
狭いバーカウンターの中で急に直立不動…いや。
どっかのリーマンみたく電話でヘコヘコ頭を下げる男を見て…驚いた。
「はい。ええ、そうです。ご覧に?」
何だ…
ちゃんと喋れるんじゃん…つか別人?
オーナーの教育がいいのか…
オーナーが単純に怖いのか…
「ええ、全く。仰る通り」
ニヤリと笑みを浮かべた店長に…カウンターから何かを投げられて、条件反射で受け取った。
「はい。では、失礼します」
受け取ったモンを広げたら―…
『黒の…Tシャツ?と一応ソムリエエプロン…』
ベストは当然、ないなぁ。
店長は黒シャツだけどボタン…胸開け過ぎだしウザい。
「下は黒なら何でもいいから。にしても君…動じないね」
動じないんじゃなく我慢してただけなんだけど?
「ウゼェ。とか思った?」
『はい』
「経験者さんだけど…試すのが恒例でね?ほら、お客様には…多いでしょ、タチ悪いのが」
『あぁ…慣れてますし外面いいですから』
ボタンを閉めてた店長が吹き出す。
「愛想って言いなよ。因みに俺…常識人よ?」
『試すの面倒ですね』
「ハハハ!俺もね、嫌なんだ。ボタン開け過ぎ寒い。どんだけ身体に自信あんだって―」
『私はTシャ…辞退します』
「体験だと思って!因みに君が働く店は…姉妹店」
飛んで来た名刺には
『―は?』
【健全ガール】ってダサッ
店名!?
「ようこそ!シェイカーの持ち腐れちゃん」
「ガールズバーで愛想ヨロ~!この仕事ウケて!」
『ウケるか!』
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