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×××××
「大食い番組かッ」
会場のなるべく端に陣取ってたアタシは、がっついてたお皿から顔を上げた。
「口から何か出てる!モザイクモザイク!」
人の顔の前で両手を×にして、指をビラビラ…即席モザイクに目を細める。
『ゲソの唐揚げだし』
「…婚活パーチーにジャージで参戦するわ、口からイカ足…て何でホテルにゲソ唐が!うまッ酒が進む!敵の罠だこれは!」
『参戦?付き添いだし男探しに行きなよ』
「心配なの!一番いい男に手は出すな」
『出してないしどこがいい男?あの野郎の金かと思えば…全部食らい尽くして―』
「あの人だけの金じゃねぇし」
それもそうか。
じゃ、苺食べておしまいだ。
「上総…あの人と何か…」
かなり遅れて、会場内に入ったアタシ達は相当…目立って。
おまけに…名前の紹介で鮫島のオジサンが張り切ってくれちゃって、お似合いですね~とか!
『似合ってたまるかッ』
グサリッ、海老天を突き刺してかぶり付く。
「尻尾まで食べないッ!この…野性児!」
『尻尾が美味しいんだよ?』
「ハァ…あんたさ、悪い病気…ぶり返してない?」
『…』
咀嚼してたモノを飲み込んで、心配する円香を横目に自分の唇を舐めた。
「ッ…」
『男はもう飽きたから…円香が欲しい…』
「かッ…ずさ!?」
『未知の領域…教えてあげる…な~んて』
「!!」
『やだ。何であんた真っ赤に』
「さ…酒よ!」
怒って背中を向けた円香には、ンベッて舌を出してやった。
「上総」
『お~ぅ』
生返事でお皿の苺を摘まんだ。
「上総がその気ならあたし…」
苺あまッ
口一杯に苺が甘い果汁を広げ、その美味しさに頬を押さえる。
「未知の領域、知りたいかも」
『…』
え、未知の領域話…まだ続いてたの?
軽い冗談…。
『や…円香?ごめん冗談―』
「もッ!弄ぶや~ん!?」
ダッシュで逃げられて、弄んだつもりはないアタシは唖然。
『…えぇ~…?つか何で今ので本気にするの~…?』
「すんだろ」
『…』
敵が現れた。
「…あんた、何つうかよ…口が一番ヤベェ。色々…な」
お皿の苺を取った男が、アタシの唇へ…それを押し当てる。
「食えよ」
『…』
目を逸らさず、苺を食べた。
「ふぅん…成る程。素直だな」
『…苺、が好きなだけ』
「苺、がね。可愛げはあるか。さっき呼んだろ」
『…は?』
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