序ノ口

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アタシがいつ、呼んだ? 「お~ぅ、ってよ。呼んだから来てやったんだ」 『…は?』 お~ぅ…ってさっきの? アレは円香への生返事… 「用があるから呼んだんだろ?何だ?どうかしたか?」 至極、真面目に宣(のたま)う男はどうやら…本気でそう言ってきてるらしい。 何コイツ。 ウケないけど…ちょっと面白いじゃん。 こんなんで天然入ってるの? 思わず、握っていたフォークをくわえて繁々、男の頭から爪先までを見た。 「上総?」 身長180越え=アウト 腹は出てない=ジム=アウト ブランドスーツ=アウト ほんのり茶髪=アウト 整えられた眉=アウト 奥二重の目 『苺が好き』 「聞いた」 『あんた…それ信じる訳?』 「…」 『女って大概、苺が好きよね。だけどアタシは…嫌いなの』 「そうなのか?じゃあ何が好きなんだ?」 あぁ… 相手すんのダルい。 『高そうな苺だから…食べようと思っただけだし好きなモノを教える必要もないけど』 「お前―…」 可愛くねぇって書いてる顔に、アタシの心は満足しない。 『折角だし、苺より嫌いなモノ…聞きたくない?』 つか…聞け。 と、暗に滲ませ 『アタシを、お前って言う男。あんたみたいにね』 「…」 食べカスのみのお皿を手渡し、見上げた間抜け面へニッコリと営業スマイルだ。 『ご馳走様でした』 お皿に置いたフォークが乾いた音を鳴らした。 「どこ行く」 『離して』 男が消えないなら、自分が他に行けばいい。 そう思って移動しようとしたら…また、腕を掴む失礼さに営業スマイルが消えた。 『あんた耳も悪いの?離せっつってんの』 「お前さ」 『だから、お前って―』 「上総ッ…を、離して下さい」 『!?』 「あぁ…失礼」 素直に腕は離されたけど。 高い声を抑えた円香は珍しくて…それに驚いて振り向いたら。 『う!?』 口の中に丸い物体…食べ物だと思いたい何かを押し込まれて、更に驚いちゃったよ。 「今ね?並べられたとこだよ。好きでしょ?サクランボ」 『ッ!』 ま、円香の… 「大好きなサクランボ…持ってきた友を何故に睨むのよ」 「へぇ?サクランボ…が大好き…なんですか…上総さん」 バカ… 「ふッ…可愛い(モン)ですね」 ふッと笑いながらニヤとする…男の心の声にも敗北感が。 「ま…知ってたけどよ」 『…』
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