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直樹のことは気になるが、今は一旦依頼人のことだと思い
相談員に今回の調査のことを直樹に報告させた。
「とりあえず、まだ証拠としては不十分なのでもう少し調査進めていきます」
「わかりました、引き続きよろしくお願いします。途中経過は依頼人に伝えますか?」
「いえ、結構です」
デスクに戻って書類をまとめはじめる直樹。
この時は普通なのにな…
「なあ、直樹」
「はい?」
「お前相談員に冷たいよな。特に高橋」
初めて来た時と随分印象が違うな。
前は早く帰りたそうにずっとそわそわしてたのに、今日はやたら喋るし雰囲気が明るくなった。
だがその雰囲気とは裏腹に顔色はかなり悪そうだ。
依頼人の違和感の正体。
まさかとは思うが…
「もう少し証拠いりますか?それであればこちらももう少し動きますが」
「んー、そうですねぇー。まぁこれだけでも十分証拠になると思うので大丈夫です!本当にありがとうございましたぁ」
「いえ、では依頼料に関してはこちらにお振込みいただくようお願い致しますね」
「わかりました。では、また何かあったらお願いしますね!」
依頼人が帰ったあと、直樹は何事もなかったかのように今回の依頼の報告書をまとめはじめた。
「やけにあっさり帰すんだな」
「え?何がですか?」
「依頼人だよ。お前だって違和感を感じたはずだ。」
「んー、でも依頼は浮気の証拠を集める事、でしたし…俺たちの仕事はもう終わったんじゃないですか?」
「そうかもしんねぇけど…お前、気にならないのか?」
「何がですか?」
「依頼人のあの変貌ぶりだよ。前と明らかに違うだろ」
「そりゃあまあ、気にならないって言ったらウソになりますけど…」
「それにあれは、もしかしたら…」
直樹の言う事はもっともだ。
もう依頼は終わった。全て完了した。
でも俺が感じた違和感の正体がわかってしまった以上、なんか…
このまま終わらせるわけにはいかないと、どうしても思ってしまうんだ。
「ふふふっ、やっぱり三ツ谷さんですね」
「あ?」
直樹が優しく笑い、俺の手を引っ張って隣に座らせられる。
「そういうとこ、尊敬します。助けたいんですよね、弓永さんを」
「…っ…そんなんじゃ…」
「本当三ツ谷さんって照れ屋ですよね、可愛い!!」
「うっせぇな!照れてねぇし抱きつくな!!」
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