第2話―嫉妬―

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「ああ、知人にここはいい店だって聞いてね」 「へぇー、俺ここよく来るから知ってる人かもね。その人名前は?」 「どうだろ、その人ここで一人で静かに飲んでるって言ってたから知らないかもしれませんよ?弓永さんって言うんですけど、ご存知です?」 「え、弓永!?あのおばさん?」 「…!ご存知なんですか?」 「知ってるよ、そのおばさんも常連じゃん!」 まさか、本当にここに来てたとは… いや、まだわからない。 少し離れているとはいえ、来れない場所ではない。本当にただ呑みに来ていただけの可能性もある。 「しっかしあのおばさん大ボラ吹くもんだねー。静かに飲んでるって、いっつもラリって騒いでるくせによく言うよ」 その言葉で、疑惑が確信へと近づく。 「へぇー…とても、お酒に飲まれる方には見えないですけど。僕が知らないだけで、彼女お酒弱いんですかね」 「あー、違う違う。ラリってるのは別の原因があんの」 「別の原因、ですか」 「つーかお兄さん、あのおばさんに聞いて買いに来たんじゃないの?てっきりそう思って俺声かけたんだけど」 「買いに…」 いいのか。 これ以上踏み込んで。 疑惑が完全に確信になった場合、今この場にいるのは間違いなく危険だ。 だが… 「あー…実は、最近寝不足で…だったらこの店にいいものが売ってる、とは言われましたね。てっきりお酒のことかと思ってたけど…何か寝不足に効くいいのがあるんですか?」 「なんだ、やっぱそうか。寝不足ね、OKOK、そうなのそれに効くいいーのがあるんだよ。今日だいぶ捌いてちょっとしか残ってないけど、よかったら売ろうか?」 「そうですか、そんないいものがあるんですね。でも、しばらく持つ分がほしいので…それでしたらまたの機会にします」 「おっけー、次来た時俺いなかったら"冷たいの"がほしいって声かけて来た奴に言えば買えるから」 「わかりました、ありがとうございます」
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