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後悔先に立たず。こんなことわざが毎日のように頭を駆け巡る。
直樹が俺に対して抱いている好意を甘く見過ぎていた結果である。
「三ツ谷さん!」
「……なんだ」
「何でそんな嫌そうな顔するんですか…」
軽くため息をついた後、耳に顔を近づけ周りに聞こえないようにささやいてくる。
「2人きりの時は色っぽい顔してくれるのに」
「…!お前な…!」
「冗談です」
「冗談に聞こえねぇんだよ…っ」
「まぁまぁ三ツ谷、そう怒んなって。後輩に慕われるなんていいことじゃん」
「所長…」
この探偵事務所の所長、藤宮徹。
若くして探偵事務所を立ち上げ瞬く間にでかくしていった実力の持ち主。
過去にこの人への恩があり、俺はこの事務所に入所したわけなんだが
「怒った顔より、色気のある顔のが仕事がはかどるぞ?…俺の」
「ひっ…!またケツを…いい加減にしてくださいよ、所長!」
「あはははは!ジョークジョーク!怒んなって」
…入所当日からずっと続くこのセクハラのせいで、その恩も時々忘れる。
「どうだ鈴村、仕事には慣れてきたか?」
「はい、三ツ谷さんのお陰で」
「そうか、それはよかった。じゃあ順調ついでに、お前に仕事だ。三ツ谷、サポートよろしくな」
「ええ、いいですけど。依頼内容は?」
「今回の依頼内容は、浮気調査だよんっ」
「…は?」
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